「さきさんのちりとんぼ」レポート
2026年5月25日
「さきさんのちりとんぼ」
ダウン症の彼女が支えるつちかべの材料
彼女が建設事務所で働くまでとこれから

2026年5月9日土曜日、本納寺様の本堂やお庭にて、「さきさんのちりとんぼ」というイベントを開催いたしました。本納寺様とのご縁は、本堂の屋根葺き替え工事と耐震改修工事に携わらせていただいたことから始まりました。工事を通して、その後もお餅つきなどのイベントを通して、お寺という場所が、人と人、地域と人を静かにつなぐ、大切な場所であることを感じました。今回のイベントは、そのご縁の中から生まれたものです。
テーマとなったのは、ますいいリビングカンパニーで働く、ダウン症の女性・さきさんのお仕事についてでした。さきさんが日々取り組んでいるのは、木ずり土壁の中に使われる「ちりとんぼ」という材料づくりです。近年、自然素材や環境にやさしい暮らしが見直され、土壁も再び注目されるようになりました。しかし、その土壁を支える材料や技術を受け継ぐ人は、大きく減っています。「ちりとんぼ」という名前を知る人も少なくなり、多くの左官職人さんは、自ら材料を製作している状況です。
そこに着目した弊社会長・増井真也が、「さきさんの仕事として、ちりとんぼづくりができないだろうか」と考えたことが、この取り組みの始まりでした。しかし、仕事として形になるまでの道のりは、決して簡単なものではありませんでした。さきさんが一人で職場まで通えるようになるまでには、一年半近い時間がかかりました。ちりとんぼを製作し、商品として販売できるようになるまでにも、多くの試行錯誤がありました。それでも、「さきさんの仕事を形にしたい」という、多くの人の思いがありました。
支える人。
待つ人。
信じる人。
たくさんの人の思いが重なり、今の仕事へとつながっていきました。私たちは、さきさんの姿から、「目標を持って、自分を信じてやり抜く力」や、「頑張る人を支え合うことの大切さ」を教えていただいているように感じています。その取り組みを、子どもたちにもわかりやすく伝えたい。そんな思いから生まれたのが、絵本『さきさんとちりとんぼ ― ダウン症の彼女が支える土壁の材料 ―』です。
当日は、ますいいリビングカンパニー代表であり、絵本の作者でもある伊藤真理子による読み聞かせを行いました。
また、ますいいリビングカンパニー会長・ものづくり大学准教授の増井真也による土壁のお話では、日本の伝統文化としての土壁の魅力や、これからの可能性についてお話しさせていただきました。
さらに、土壁の「大津磨き」の技術を使った泥団子づくりのワークショップも開催しました。大人も子どもも夢中になって土に触れ、「懐かしい」「土に触れる時間が心地よかった」という声が広がりました。
土に触れ、人に触れ、思いに触れる。本納寺様の静かで温かな空間の中で、「挑戦すること」や「支え合うこと」を、あらためて考える時間になったように思います。建物の修繕から始まったご縁が、このように本納寺檀信徒や地域の皆さまと新しい時間を共有する場へと広がったことに、深く感謝しております。



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